東京地方裁判所 平成5年(特わ)112号 判決 1993年6月29日
本籍
岐阜県岐阜市若福町八番地
住居
東京都新宿区新宿七丁目二六番七 びくせる新宿七〇四号
不動産業手伝い
村上忠夫
昭和二三年六月二五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡邉清、弁護人岡田良平各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金二五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、岐阜県羽島郡岐南町徳田五丁目六番地に居住し、その間の昭和六〇年一一月から昭和六二年九月までは東京都新宿区歌舞伎町二丁目三〇番一四号二番館ビル地下一階において、昭和六二年九月から平成二年一月までは、同区歌舞伎町二丁目二一番三号第六本間ビル一階において、それぞれポーカーゲーム店を経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、右各店の経営者が自己でなく、各店の従業員であるかのように装い、かつ、売上金を借名口座に入金するなどして、その所得を秘匿したうえ
第一 昭和六二年分の実際総所得金額が四四一七万六七二三円(別紙一の1の修正貸借対照表のとおり)であったのにかかわらず、右所得税の納付期限である昭和六三年三月一五日までに納税地である岐阜県岐阜市加納清水町四丁目二二番地二所轄岐阜南税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで、右期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の所得税額一八九四万六五〇〇円(別紙二の1の脱税額計算書のとおり)を免れ
第二 昭和六三年分の実際総所得金額が七二八一万一二三九円(別紙一の2の修正貸借対照表のとおり)であったのにかかわらず、平成元年三月一五日、前記岐阜南税務署において、同税務署長に対し、昭和六三年分の総所得金額が二一〇万八四〇〇円で、これに対する所得税額が二万六四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額三三七七万六八〇〇円と右申告税額との差額三三七五万〇四〇〇円(別紙二の2の脱税額計算書のとおり)を免れ
第三 平成元年分の実際総所得金額が二億七三八八万八二七六円(別紙一の3の修正貸借対照表のとおり)であったのにかかわらず、同二年三月一四日、前記岐阜南税務署において、同税務署長に対し、平成元年分の総所得金額が二五七万〇四〇〇円で、これに対する所得税額が三万〇九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億三二〇八万七〇〇〇円と右申告税額との差額一億三二〇五万六一〇〇円(別紙二の3の脱税額計算書のとおり)を免れたものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書(八通。検乙1、2、4、5、12ないし14、16)
一 岡野克美、柳原浩巳、村上節子(五通)、村上正男の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の普通預金調査書(検甲2)
一 大蔵事務官作成の定期積金調査書(検甲4)
一 大蔵事務官作成の定期預金調査書(検甲6)
一 大蔵事務官作成の郵便貯金調査書(検甲7)
一 大蔵事務官作成の一時払保険調査書(検甲10)
一 大蔵事務官作成のゴルフ会員権調査書(検甲11)
一 大蔵事務官作成の車両調査書(検甲20)
一 大蔵事務官作成の借入金調査書(検甲22)
一 大蔵事務官作成の所得控除調査書(検甲25)
一 検察事務官作成の捜査報告書(四通。検甲1、3、5、21)
一 岐阜南税務署長作成の証明書(検甲36)
一 萩原町長作成の除籍謄本(付票を含む。検乙18)
判示第一、第二の各事実につき
一 被告人の検察官に対する供述調書(検乙7)
一 検察事務官作成の捜査報告書(検甲35)
判示第一、第三の各事実につき
一 被告人の検察官に対する供述調書(検乙8)
判示第一の事実につき
一 被告人の検察官に対する供述調書(二通。検乙3、10)
一 大蔵事務官作成の受取手形調査書(検甲14)
一 検察事務官作成の捜査報告書(検甲15)
判示第二、第三の各事実につき
一 大蔵事務官作成の申告所得調査書(検甲23)
一 伊藤眞の検察官に対する供述調書
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の給与所得調査書(検甲24)
判示第三の事実につき
一 被告人の検察官に対する供述調書(三通。検乙6、9、11)
一 大蔵事務官作成の株式調査書(検甲8)
一 大蔵事務官作成の投資信託調査書(検甲9)
一 大蔵事務官作成の貸付金調査書(検甲12)
一 大蔵事務官作成の土地調査書(検甲16)
一 大蔵事務官作成の建物調査書(検甲18)
一 検察事務官作成の捜査報告書(三通。検甲13、17、19)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも所定の懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ、各罪につき情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留意することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項本文により被告人に負担させることとする。
よって主文のとおり判決する。
(求刑・懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円)
(裁判官 伊藤正髙)
別紙一の1
修正貸借対照表
<省略>
(修正貸借対照表)
<省略>
別紙一の2
修正貸借対照表
<省略>
(修正貸借対照表)
<省略>
別紙一の3
修正貸借対照表
<省略>
(修正貸借対照表)
<省略>
別紙二の1
脱税額計算書
<省略>
別紙二の2
脱税額計算書
<省略>
別紙二の3
脱税額計算書
<省略>